1型糖尿病の食事について、制限の有無や注意点などを当事者の私が徹底解説

糖尿病
  • 1型糖尿病になったらどんな食事をとれば良いの?
  • 1型糖尿病は食事制限や注意しなければいけないことはあるの?
  • 家族が1型糖尿病になってしまったが、どんな料理を作ってあげればいいんだろう…?

この記事を読んでくれているあなたは、このような疑問をお持ちではないでしょうか。

今回は、2023年の11月に1型糖尿病を発症した私が、実体験と主治医からの話なども交え、1型糖尿病の食事について徹底解説していきます。

2型糖尿病の方にも参考になる内容を多く含んでおります。

糖尿病患者の方、ご家族や知人の糖尿病で悩んでいる方はぜひ最後までお読みください!

1型糖尿病の食事療法を4つの観点から解説

糖尿病は1型でも2型でも、治療の一つに食事療法があります。

今回は、1型糖尿病の方の食事療法の基本的な考え方について、4つの観点から解説してみました。

1.なぜ食事療法を行うのか?

そもそも、なぜ糖尿病の治療に食事療法が必要なのでしょうか?

それは、糖尿病が食事と密接な関わりを持つ病気だからです。

1型も2型も、糖尿病の課題は血糖値をコントロールすることです。もっと言うと、

血糖値の上昇をおさえ、適切な値を目指すことです。

そして、血糖値が上昇するタイミングは主に食後なんですね。

そのため、糖尿病の治療には食事療法が必要ということなのです。

2. 1型糖尿病に食事制限はあるのか?

結論から言うと、人によります。

食べてはいけないものは基本的にありません。”甘いものを食べてはいけない”ということなどもないです。

しかし、肥満気味で医師から指導を受けている場合などは制限のある方もいるでしょう。

また、食べてはいけないものはないと言いましたが、栄養バランスの取れた食事をなるべく決まった時間にとることがおすすめです。(血糖値が比較的コントロールしやすいため)

ただ、あまりに食事をガチガチに管理するのも、かえってストレスがたまってしまいますよね…^^;

ストレスも血糖値を上げる要因と言われていますので、無理のない範囲での食事管理を心がけましょう!

3. 1日の摂取カロリー目安

こちらも人それぞれで異なります。

ただ、目安として使える計算式はありますので、参考にしてみてください。実際に私が入院した際に習ったものです。

それがこちら。

①目標体重(kg)×②エネルギー係数=1日に必要な摂取カロリー(kcal)

①の目標体重の求め方は、身長(m)×身長(m)×目標BMIです。

BMIとは肥満度を表す指数のことで、目標BMIの目安は下記の通りです。

年齢目標BMIの目安
65歳未満22
65歳から74歳22〜25
75歳以上22〜25※

※75歳以上の後期高齢者の方は、状況により適宜判断が必要

例えば私の場合、身長が180cmで32歳のため、

1,8(身長m)×1.8(身長m)×22(目標BMIの目安)=71.28(kg)が目標体重となります。

②のエネルギー係数に関しては、体重1kgあたりに必要なエネルギー量の目安が下記の通りに決まっています。

活動量必要なエネルギー量
軽い労作(大部分が座位の静的活動)25〜30
普通の労作(座位中心だが通勤・家事・軽い運動を含む)30〜35
重い労作(力仕事や活発な運動習慣がある)35〜
肥満の人(BMIが25以上)※20〜25

※現在のBMIの求め方:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

私の場合は座位中心のサラリーマンですので、「普通の労作」にあてはめ、30で考えてみます。

①と②がわかったので、これで1日に必要な摂取カロリーを計算できるようになりました。

私の場合、

71.28kg(目標体重)×30(エネルギー係数)=2138.4kcal(1日に必要な摂取カロリー)

となります。

ご自身の場合に当てはめて、摂取カロリーの目安を確かめてみてください。

引用:専門医が語る糖尿病の食事療法

4.食べ方の工夫5選

糖尿病治療に有効な食べ方の工夫について、5つのポイントからまとめてみました。

2型糖尿病の方や健康な方にも参考になる内容だと思いますので、ぜひ見ていってください。

1.糖質やGI値に注意して食品を選ぶ

既に説明したように、糖尿病の方の課題は血糖値のコントロールです。

そして、血糖値の変動に最も影響するのは三大栄養素の中でも炭水化物(糖質)になります。(三大栄養素:炭水化物、たんぱく質、脂質)

ちなみに、炭水化物=糖質+食物繊維を指します。

下記のサイトを見ていただくとわかりますが、炭水化物(糖質)が血糖値を最も急激に変動させる栄養素なのです。

参考:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター

そのため、糖尿病の方は、食事の際に炭水化物量(糖質量)がどれだけあるのかを把握しなくてはなりません。

また、GI値という指標も健康的な食事を摂る際の目安になります。

GI値とは、Glycemic Index(グリセミックインデックス)の略で、糖質が体で吸収される度合いを示したものです。

GI値が高いほど吸収のスピードは速くなります。つまり血糖値の上昇が急になるということです。

なるべくGI値の低い食品を選ぶように普段から心がけたいですね。

下記サイトで、各食品のGI値がわかりやすくまとまっているので、参考にしてみてください!

参考:糖サポ広場

2.食べる順番

ベジファーストという言葉なんかも普及してきたので、聞いたことがある方も多いかもしれません。

食べる順番を工夫することで、急激な血糖上昇を抑えることができます。

炭水化物以外の食物繊維を含む食材→たんぱく質を含む食材→炭水化物(糖質)の順番に食べることで、血糖上昇をゆるやかにすることができます。

具体的には、

野菜や海藻類→肉や魚→ご飯、パン、麺 という感じです。

上記のような順番で食べることができる、定食的なメニューが理想ですね。

逆にラーメンやカツ丼など、一口目から炭水化物(糖質)を口に運ぶようなメニューはほどほどにしましょう。

3.ゆっくりよく噛む

ゆっくりとよく噛んで食べることで満腹中枢が刺激されて、少ない量で満腹感を得ることができます。

1型糖尿病の方のほとんどは、食事の度に体の外からインスリンを注入する(注射を使用する人が多い)インスリン治療が必要です。

肥満が進行すると、このインスリンの効き目が悪くなると言われています。

適切な量の食事で、肥満を予防することも大切です。

4.寝る前を避けて1日3食規則正しく食べる

夕食から寝るまでの時間が短いと、炭水化物(糖質)が活動のエネルギーとして十分に使われず、体に貯蓄されていきます。その結果、肥満のリスクが上がってしまうのです。

また、血糖値が下がりきらないまま寝てしまうので、高血糖状態が続いてしまうことも。

これは私も実際に体感しており、夕食から就寝までの時間が短いと、必ずと言っていいほど起床時の血糖値が高くなります。(180〜200ぐらい)

ちなみに健康な人の起床時の血糖値(空腹時血糖)は80〜100ぐらいです。

個人差もあると思いますが、夕食をしっかり消化してから寝るほうが良いのは間違いありません。

できる限り、夕食から就寝までは3時間ほどあけるように努めましょう。

また、1日3食を規則正しく(できるだけ時間を固定して)食べると、血糖値も安定しやすいと言われています。

ただ、こちらは人によっては検討の余地があると思います。

というのも、試しに1日2食にしてみたことがあったのですが、特に血糖値の急な変化はなく、比較的落ち着いておりました。

「絶対に3食食べなきゃだめ」と考える必要はないんじゃないかと。

しかし、1食食べなかったからと過食してしまうと、当然血糖値への影響も懸念されます。

1回の食事のドカ食いを防ぐために、3食食べることが推奨されているのかもしれません。

ただこれはあくまで私の意見ですし、体の反応には個人差があります。

1日の食事回数の調整にご希望があれば、必ず主治医に相談しましょう。

5.バランスの良い食事を心がける

肥満はもちろん気をつける必要がありますが、過度なダイエットなどで必要な栄養がとれていないことも良くないです。

前項で話したカロリーの目安の範囲内で、可能な限り三大栄養素のバランスを整えましょう。

ちなみに推奨されている三大栄養素の摂取バランスは、

  • 炭水化物:40〜60%
  • たんぱく質:20%
  • 脂質:20〜30%

となっております。

上記はあくまで目安です。糖尿病の合併症の有無などによっても変わると思いますので、主治医の先生に確認してみてくださいね。

参考:国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター

1型糖尿病の食事療法で注意すること2点

1型糖尿病の食事療法には注意点があります。

1型糖尿病とつきあっていく上で大切なことなので、こちらもしっかりチェックしていってくださいね。

1.低血糖の時の対処

低血糖とは、文字通り血糖値が低くなってしまう状態のことです。

血糖値は低いほうが良いんじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、血糖値は低すぎることもまた危険なのです。

具体的には血糖値が79以下だと注意しなくてはいけません。

低血糖の症状は、手の震え、目まい、動悸、ふらつきなどがあり、最悪の場合、意識を失ってしまうケースもあります。

前章でもお話しましたが、1型糖尿病になると、食事の度にインスリン注射を行う方がほとんどです。

食事の糖質量に対して、インスリン注射の量が多過ぎると、血糖値が過度に下がってしまい、低血糖を引き起こします。

特に1型糖尿病になったばかりの方だと、糖質量の計算に慣れず、頻繁に低血糖になってしまうかもしれません。

低血糖になってしまった時は、体に素早く糖質を吸収するための捕食が必要です。

捕食するものの例によく挙げられるのはブドウ糖ですが、ラムネ、チョコレート、ジュースなどでも代用可能です。

ただ、低血糖だからと食べすぎてしまうと、今度は逆に高血糖になってしまいます。

糖質量5〜10gを目安に捕食をしましょう。

2.シックデイで食事がとれない時の対処

シックデイとは、風邪を引いてしまった時のことです。

風邪を引いてしまうと、食欲が落ちる方もいると思います。

では、仮に食事がとれなかった場合、インスリン注射は中断しても良いのでしょうか?

これは、結論から言うと人によります。

ただし、主治医から指示がない限りは、基礎インスリンの注射は中断してはいけません。

基礎インスリンとは、1型糖尿病の方が、基本的に1日1回は必ず打つ時効型と呼ばれるインスリンです。

時効型と呼ばれる基礎インスリンと即効型と呼ばれる追加インスリン(食事の度に打つインスリン)を使い、1型糖尿病の人は生活しています。

基礎インスリンは1日を通してゆるやかに長く、追加インスリンは短い時間で素早く効くという特徴があります。

食事を全くとれない、もしくはわずかな糖質量しかとれない場合は、追加インスリンを打たないことはあるかもしれません。

ただ、こちらも勝手に判断はせず、主治医の方に必ず相談してみてくださいね。

1型糖尿病の食事でよくある質問4つ

1型糖尿病の食事について、よくある質問をまとめてみました。

リアルに気になりそうな素朴な疑問もとりあげましたので、みなさんの参考になれば幸いです。

1.  1型糖尿病は実際にどんな食事をとればいいの?

1型糖尿病の食事療法については理解できたけど、結局、具体的にどんな食事をとればいいの…?という方もいるのではないでしょうか。

参考までに、私のある日の1食の食事内容をこちらに載せておきます。

ただ、身長や体重、性別などによって適切な食事量や内容は異なりますので、その点ご了承いただければ幸いです。ちなみに私は身長180cm、体重は65kgの男性です。

  • リンゴ酢ドリンク(水200ml、リンゴ酢大さじ1)
  • わかめの味噌汁(150mlぐらい)
  • 大根サラダ(60〜70gほど)
  • 素焼きナッツ7〜8粒ほど
  • サバ缶(水煮)1缶
  • スクランブルエッグ(卵1つ)
  • 玄米ご飯(160g)←糖質49g
  • 納豆1パック

サラダにはオリーブオイルと塩をかけて食べています。

この食事の場合、人によってはたんぱく質量がやや多めなので、もう少し炭水化物の比率を高くしても良いかもしれません。

ただ、概ね食事バランスは整っていると思います(ちょっとカロリーは少なめですが…)

ちなみに、リンゴ酢は血糖値を下げる効果が期待できるのと、お通じがめっちゃ良くなるのでおすすめです。ただクセがなかなか強いので、慣れるまで時間はかかります…笑

1章で話したように、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質がバランスよくとれそうな食事をなるべく心がけましょう。

2. 1型糖尿病の家族がいるが、どんな食事を作ってあげれば良い?

栄養バランスに極端に偏りがなければ、どんな食事でもOKです。(医師から特別な指導をされている場合を除いて)

既にお話したように、1型糖尿病に食べられない物はありませんので、神経質になりすぎなくて良いと思います。

食事の糖質量をしっかりと把握して、その量に応じたインスリンを打つことが大切です。

料理の中の糖質量を気にされるようであれば、天然甘味料である”ラカント”などを使用するのも良いかと。

少々お値段は張りますが、砂糖と同じ甘さでカロリー0、かつ、血糖上昇にもほとんど影響を及ぼさないという優れものです。

砂糖に慣れている方はもしかしたら風味に違和感があるかもしれませんが、一度試してみる価値はあると思います。

3. 1型糖尿病の人へのお土産はお菓子じゃないほうが良い?

結論、どちらでも良いと思います。

食べられないものはないですし、お土産は贈るという気持ちが大切ですから。

ただ、今は糖質量をおさえたお菓子やスイーツもたくさんあり、糖尿病の方でも罪悪感なく食べられるものが増えてきています。

「この糖質量でこんなに美味しいの!?」というお菓子もありますので、そういうものだと、お相手の方はさらに喜んでくれるかもしれませんね。

4. 食事をしない場合はインスリン注射を打たなくても良い?

シックデイの項目でも話しましたが、こちらは人によります。

基本は、主治医の指示に従いましょう。

例えば私の場合だと、主治医から「糖質20gまでは注射なしでOK」と言われています。

なので、糖質20g以下のお菓子などは注射せずに食べてる感じです。

実際、血糖値的にも特に問題はありません。(少し上がって、時間が経つと下がってくる)

ただ繰り返しになりますが、基礎(時効型)のインスリンを打たないという選択肢は基本的にありませんので、こちらは毎日忘れずに打ちましょう。

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